本物の創作活動をする人にとって、その世界でプロになることだけでも大変です。さらにそこで名をはせることも難しく、簡単には歩めないのが現実なのです。
そのなかで、一度はプロとして活躍した人、これから名を上げていく人に集まっていただき、鼎談を企画。元声優、漫画家、元小説家に思いおもいの考えを語ってもらいました。
今回はその第2部をお送りします。
第2部記事は第1部の内容からの続きとなります。一番目から読むのをおすすめします。
※注意 お送りする内容は、あくまで一個人の意見、各人の経験則を基に、『創作の世界はこうであって欲しいという切なる思い』をお伝えするものであり、批判などではなく、今後も明るい未来が続くことを願う内容となっております。また誹謗中傷などを避けるため、インタビューした3名の方は匿名とさせていただきます。
前回のインタビューの続き
鼎談形式でお送りします。
プロの小説家は略歴が必須
元声優:(元小説家に対し)14歳で小説家デビューというのはすごいですよ。私が14歳のとき何していたかと考えると、野球しかしてなかったですね(笑)。
筆者:(男って)何もしてなかったですよね(笑)。
元小説家:いえいえ、そんな大したことはないですよ。しかし、今はフリーとか勝手に作家と言える時代なのだなって感じています。
元声優:時代ですよね!20年くらい前に劇団を遊び程度ですがやっていた時期がありました。大それたお仕事があったわけではないのですが、あるとき『作家と名乗る人』から連絡がありました。私はよく分からないのですが、やっぱり作家さんって受賞歴が必要なのですね。
最初に届けられた手紙にご自身が受賞した賞を10個くらい記載されていましたね。掲載されている本とか見たのですが、私はよく知らなかったのですが、でも来ていただいてすごく力のある方でいっぱい書いていただきましたね。
ちょうどそのころにネットが広がった時期で、ある有名なサイトでその人が『ネット芸術家』と呼ばれていたのを発見しましたね。20年前にすでにそんな人はいたのだなって。
ひと昔前は紙VSウェブの時代があった
筆者:漫画に限ってですが、約10年前に大手出版社もウェブ漫画に力を入れ出しはじめた時期がありました。私が学生時代にも某老舗出版社がウェブ漫画のサイトを普及させるために、大学の授業内でシステムなどを紹介したりしていました。
でも、内容をみていたらビジネス的に考えて『出版社の利益ってどうなるの?』と、学生なりの疑問がわきましたね。でも、よくみると最初はウェブ掲載、最終的には本を出して販売するという流れでした。
結局、試行錯誤されたようですが、うまくいかずに閉鎖されていましたね。私の学生時代はちょうどウェブ漫画をどうにかしないといけない、という流れがありました。雰囲気としてウェブ媒体VS紙媒体の論争もあったほどです。
ただ、ペンの質感となると、別にウェブでも紙でも保たれます。唯一、紙でしか表現できないことは何かと考えたら、せいぜいページをめくる速度感が個人によって違うというくらいです。今はどっちに掲載してもいいよねってなってきました。
でも一番大事なのは、漫画には『マンガ文法』というのがあるのですが、手塚治虫先生が開発したもので、これはあくまで紙媒体に適応したものです。なので、ウェブにはウェブ用の文法をつくるべきなのに、それをやらずにウェブ媒体に移行したので違和感がありました。そこで手招いている間に、SNSとか小説と一緒で『フリーの漫画家』みたいなのが増えたイメージです。
(ネットが普及した)約10年前が本当にポイントで、声優界も漫画界も小説界も本来やるべきことをやらずに整備せずにきたから、こういうことが起こっているのかなと思います。
元声優:声優界ではおそらく大手事務所に関しては、『象が蟻を気にしない』感覚だと思います。(フリーの声優とか)『別に気にしない』という考えだと思います。ただ、中間層の事務所や個人事務所は気にしている部分ではあると思います。しかし、上の方はそもそも多忙なので、構っていられないのかもしれないです。
ただ、テレビ局やアニメ制作会社が直接、ネット声優やフリー声優に声を掛け出したら、大騒ぎになると思います。
漫画家:ボクは紙の方が好きですね。雑誌で連載して長く描きたいです。こだわりはないですが、その雑誌に合う漫画が描ければいいかなって思っています。
元声優:そのときは先生と言えばいいの?
漫画家:いや、それはやめてください。
作家性のある人は器用
漫画家:小学生のころから、絵を描いてセリフを入れて、漫画のマネっこをしていて、それで将来、漫画家になろうと思いました。中学生のときは何もしていなかったのですが、漠然となりたいとは思っていて、高校でも特に何もしていたわけではないですが。その後、大学に入学したのですが中退してしまったので『これはそろそろヤバイ』と思い、漫画を2019年5月に半年くらいかけて描いて、それで運よく担当がついてという感じですね。
なんでしょうねぇ。でも物心ついたときからなりたかったので、きっかけとかはないですね。
筆者:漫画を描くうえで、何かしらの作品を見て考察したりしますか?
漫画家:映画とか見たりですか?どうでしょうねぇ。うーん考察ですか?(見て)影響はされますし参考にはしますね。
元声優:声優のレッスンをすると彼はうまいのですよ。本当に『間違わない』というのが正しいですね、とらえ方がうまいです。ものをつくる人ってうまいのだなと感心しました。本来なら分野違いなので破綻するものなのですが、間違わないし正確にキャラクターをとらえるしで、日本語も正確にとらえるのです。これはすごいなと思いました。
そしてレッスンするとですね、題材にしたシェイクスピアに影響されて、(漫画)のセリフがシェイクスピアになったらしいです(笑)。
漫画家:長いって言われましたね。ボツになりました(笑)。漫画に合わなかったですね。
でも、漫画って自由なところがいいと思います。別に文字だけでもいいのじゃないかと。絵だけでもいいですし、好きな人は好きなのではと思います。
プロ作家は最低限の文章のルールは守るべき
筆者:それで文字についてはどう思いますか?
元小説家:ネットが普及して以降、それまで一つひとつ、句読点の決まりとか代名詞の使い方とかがあって、すごい暗黙のルールではないですが、変な使い方を続けるとウチはダメですよってなっていたのが無くなって。例えば『それ』という言葉をとっても、一つのところに20個くらい入れていても、極端に言えばそれでもおもしろければOK、好きな人がそれを見たらいい、となっていますね。なんでもありになっていますね。
いい意味でとらえたら、それまで小説を書きたくても敷居が高くて賞とかにも投稿しにくい人が、ペンをとれる時代にはなったと思います。
でも、個人的には(書き方の)ルールはあった方がいいと思っています。
元声優:書かれる方の日本語って、セリフとしてつくるときとは若干、違うところもあると思うのですが、教える側としてはやっぱり日本語は多少勉強するのです。でも、書く能力は全くないのです。でも、なぜ日本語ってなぜあんなにいいかげんなのでしょうね?
元小説家:そうですね。
元声優:日本語ってジャンルはすごい、ざっくばらんですよね。音声だけでいうと変わっていくのですよ。アクセントとかが。
終わりに
今回もざっくばらんに3人の方に語っていただきました。プロ作家に大事なのは、やはり経歴かもしれません。現代ではアマチュアがプロを装うことが容易なため、これまで守られてきたルールや単価が下がる一方なのかもしれません。
しかし、ここで肝心なのはアマチュアであってもプロであっても『教育する』というのが大切ではないでしょうか。アウトサイダー的にやる方は多いですが、そのカテゴリーでも本当の意味でも成功するのは、それなりの才能が無い限りできません。学習せずにプロっぽいことをする人が増えると、ただただ本来の価値を落とすだけなのではないか?と筆者は感じました。